- 当事者の私がKindle本を出そうと思った理由
- 本を書くときに「書かない」と決めたこと
- 書いているうちに変わった、本を届けたい相手
- どんな人に読んでほしい本か
「自分の経験なんて、誰かの役に立つんだろうか」。そう思ったことはありませんか。
精神障害があり障害者雇用で働く私は、2026年10月に電子書籍『3回倒れて、それでも働く:障害者雇用で立て直した12の悩みと答え』をKindleで出版しました。この記事では、なぜ本を書いたのか、そして書いているうちに何が変わったのかを書きます。
- きっかけは「誰かの役に立ちたかった」。どん底から戻ってこられた者として、かつての私と同じ場所にいる人に向けて書く責任があると思った
- 書いているうちに、届けたい相手が増えた。今まで支えてくれた人たちに読んでほしくなった
- 診断名とお金の数字は書かなかった。病名や年収で比べずに、自分のこととして読んでほしかったから
本を書こうと思った理由:誰かの役に立ちたかった
私は精神科に3回入院しています。3回目の入院のときは、病室でただ茫然と寝て過ごし、「自分はもう働けない人間なんだ」と本気で思っていました。
そこから就労移行支援に通い、パートから正社員になり、中退した大学を働きながら卒業し、今は未経験から入ったエンジニアの仕事をしています。病気が治ったわけではなく、今も月に一度通院しています。
就労移行支援から正社員になるまでの道のりは、引きこもりから障害者雇用の正社員になるまでで紹介しています。
本の中にも書いたのですが、私には昔、父から教わった言葉があります。ノブレス・オブリージュ。恵まれた立場にいる人には、ほかの人のために生きる責任がある、という意味です。
若いころの私は、この言葉を「だから止まってはいけない」と受け取っていました。今は少し違う読み方をしています。
一度どん底まで落ちて、そこから戻ってこられたこと。それ自体が恵まれていたのだと思います。助けてくれた人がいて、使える制度があって、受け入れてくれた会社があった。だから、戻ってこられた者には、かつての私と同じ場所にいる人に向けて書く責任がある。それが、本を出そうと思ったいちばんの理由です。
本を書いたのは「成功した人の話」をしたかったからではありません。どん底にいたときの自分が読みたかったものを、今苦しい誰かに届けたかったからです。
ブログ・noteがあるのに、なぜ本にしたのか
このブログでは、障害者雇用の制度や転職の手順を1記事1テーマで書いています。noteでは、入院から今までの道のりを物語として連載しています。
ただ、ブログは「調べたいこと」には答えられても、そのとき私が何を感じていたかまでは書けません。noteは気持ちは書けても、「だからどうすればいいか」までは書けません。
物語とやり方を、1冊の中でつなげたかった。それが本にした理由です。本では、どの章も次の形にしています。
| 順番 | 中身 |
|---|---|
| 悩み | 「もう無理だと思っている」「辞めたいが頭から離れない」など、かつての私の悩みを一行で |
| 物語 | そのとき何が起きて、何を感じていたか |
| HOWTO | あのとき知っていればよかったこと、実際に役に立った手順 |
| 当時の自分へ | 数行の短いメッセージ |
本にしかないものとして、年表、自分の「限界のサイン」を書き込むシート、合理的配慮を伝えるための記入シート、チェックリストも付けました。
書かないと決めた2つのこと
書き始める前に、二つのことを書かないと決めました。
ひとつは診断名です。病気や障害によって、症状も使える制度も回復の道筋も違います。それでも、働けなくなる怖さや、生活を立て直すときの悩みには重なる部分があると思っています。病名でふるいにかけずに読んでほしくて、書かないことにしました。
もうひとつはお金の数字です。年収も月給も時給も書いていません。数字は人によって事情が違いすぎて、比べると苦しくなるだけだと思ったからです。「時給から月給になった」のように、変化の大きさだけを書いています。
書いているうちに、支えてくれた人に読んでほしくなった
最初は「苦しんでいる誰か」に向けて書き始めました。でも、過去の場面を一つずつ書いていくと、どの場面にも必ず誰かがいました。
入院に付き添ってくれた家族。「お母さんと少し距離を置いて」と言ってくれたソーシャルワーカーさん。上司に直接言えなかった悩みを代わりに届けてくれた支援員さん。本音を話したときに受け止めてくれた前の会社の上司。ずっと診てくれている主治医。
書き終えて分かったのは、この本に出てくるのは「立て直した私」ではなく、「私を立て直してくれた人たち」だということでした。
そこで、本の最後に「支えてくれた人へ」という謝辞を加えました。冒頭には母への献辞も入れています。名前は出していませんが、読めば本人には分かると思います。
書くことは、自分の過去を整理することでもありました。つらかった出来事も、振り返ると「助けてもらった場面」に見え方が変わりました。
本を出すまでの流れ
| 時期 | やったこと |
|---|---|
| 構想 | ブログの情報とnoteの物語を1冊にまとめる構成を考える |
| 2026年10月中旬 | 目次を12の悩みに組み直し、タイトルを決めて初稿を書く |
| 書き直し | 長すぎた原稿を読みやすく削り、各章に「今だから言えること」を足す |
| 仕上げ | 匿名性のチェック、表紙と商品紹介文づくり |
| 2026年10月25日 | Kindleで発売 |
出版はAmazonのKDP(Kindle ダイレクト・パブリッシング)を使いました。個人でも電子書籍を出せるサービスです。
どんな人に読んでほしいか
- 病気や障害があって、「働けるだろうか」「働き続けられるだろうか」と不安な人
- 休職中の人、無職の期間が長くなっている人
- 部屋から出られない日が続いている人
- そういう人のそばにいる家族や支援者の方
障害者雇用で働いている人に限りません。私も最初は、障害者雇用という言葉さえ知りませんでした。
『3回倒れて、それでも働く:障害者雇用で立て直した12の悩みと答え』は、Kindle Unlimitedでも読めます。
よくある質問
Q. どんな内容の本ですか?
精神科に3回入院した私が、障害者雇用で働き続けるまでの道のりを、12の悩みごとに「物語」と「やり方(HOWTO)」で書いた本です。手帳や就労移行支援、合理的配慮の伝え方、正社員登用、未経験での転職などを扱っています。
Q. 病名が違っても読めますか?
読めます。本では診断名を書いていません。病気や障害によって事情は違いますが、働けなくなる怖さや、生活を立て直すときの悩みには重なる部分があると思っています。
Q. Kindle端末がなくても読めますか?
読めます。無料のKindleアプリを入れれば、スマートフォンやパソコンでも読めます。Kindle Unlimitedの対象にもなっています。
まとめ
- 本を書いたのは、どん底から戻ってこられた者として誰かの役に立ちたかったから
- 書いているうちに、支えてくれた人たちに読んでほしいという気持ちが加わった
- 診断名とお金の数字は書かず、自分のこととして読める本にした
この本は、ゴールした人の話ではなく、途中の人の話です。私も今、資格の勉強をしながら、働きながら学び続けています。
今の状況は、あなたの人生の結論ではありません。この本が、小さな一歩のきっかけになればうれしいです。


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