障害者雇用の先駆者、日本理化学工業の物語
日本理化学工業は、学校で使われるチョークを製造する企業で、国内シェアの35%を占めるトップメーカーです。従業員はおおよそ80人ほどで、そのうち60人が知的障害を持つ方々です。その中でも半数以上は、IQが50以下の重度の障害を持つ社員です。この企業の障害者雇用の歴史は、ある養護学校の先生からの熱心なお願いに始まります。
きっかけは熱心なお願い
当時、養護学校の先生が日本理化学工業に就職のお願いに訪れました。会長の大山泰弘さんは最初、受け入れを断るつもりでしたが、先生は何度も足を運び、ついには「最後のお願いを聞いてほしい」と言います。「生徒たちに一度だけでも働く経験をさせてほしい。それをもって卒業させたい」との言葉に、大山さんは心を動かされ、2週間の就業体験を受け入れることに決めました。
就業体験の感動的な結果
2人の生徒が企業で働く経験をすることができるようになったその日から、何もかもが変わりました。就業体験の最終日、社員たちが感動し、十数人が大山さんに向かって、実習生を正式に社員として採用するように頼んだのです。その結果、昭和35年から知的障害を持つ社員の雇用が始まり、障害者雇用を推進する企業としての道を歩み始めました。
ご住職との出会いがきっかけに
日本理化学工業の障害者雇用が本格的に進んだのは、あるご住職との会話がきっかけでした。禅寺での法事の席で、隣に座った住職に「どうして字も読めない重度の知的障害者が、毎日会社に来るのか不思議だ」と話し始めました。その質問に対して、住職は「人間の究極の幸せは、愛されること、褒められること、そして役に立つこと、必要とされることです。施設ではそのような言葉をかけてもらうことはありませんが、企業では『ありがとう』や『助かった』など、感謝の言葉をかけられ、働くことが幸せにつながる」と言ったのです。
この言葉が大山さんに深く響き、障害者が社会で活躍できる場を提供することが、自分の使命だと感じたそうです。それからは、障害者雇用を積極的に進め、働く場所を提供することで、より多くの障害者が自立して生活できる社会作りに貢献しようと決意を新たにしました。
障害者雇用が生む喜び
障害者雇用は、ただ「雇用の場を提供する」ということだけではなく、社員一人一人が「自分が必要とされている」と感じられることが、何よりの喜びとなります。日本理化学工業では、社員が「ありがとう」と言われることで、働くことが幸せに繋がると実感しています。このような企業文化が、障害者雇用を推進する大きな力となっているのです。
あなたにも合う職場がきっとある
企業の障害者雇用は、年々広がりを見せています。障害を持つ方々が働きやすい環境を提供する企業は増えてきており、あなたにぴったりの職場が見つかることを願っています。障害者雇用を進める企業は、ただ単に雇用を提供するだけでなく、社員一人一人が自分の役割を実感し、働くことで幸せを感じる場を作り上げています。
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